活動案内

てんかん治療の問題点

昨今,てんかん患者の自動車事故が頻繁に報道され,発作が抑制されない危険な状態のまま,社会生活を営む患者の存在が広く知られるようになりました. てんかんの有病率は0.8%とされ,わが国では約100万人の患者が存在すると推定されており、神経疾患の中ではもっとも患者数が多いcommon disease”ありふれた病気”です.

60-70%の患者さんは1種類の適切な抗てんかん薬で発作が起こらなくなりますが、てんかんの診断はじつは大変複雑で、診断そのものの誤りや薬剤使用法の誤り等による「見せかけの難治てんかん」の存在が以前から知られています.また,2-3種類以上の薬剤で2年以上発作が抑制されない患者さんは,てんかん外科治療を検討すべきであるとされているにもかかわらず,わが国で一年間に手術を受ける患者さんは約500人しかおらず,統計学的に外科治療の恩恵を受けられるはずである年間約2000人の患者さんの多くが,頻回の発作に苦しみながら生活していることになります.

これらの状況には様々な要因があると思われますが,てんかん診療の専門家が少ないことが大きな要因であることは間違いありません.また,てんかん診療を行う診療科が、施設によってまちまちで(小児科・精神科・神経内科・脳神経外科),患者さんがどの医療機関を受診すればよいかわかりにくいだけでなく,医師側も,てんかんを疑う患者さんをどの医療機関に紹介すべきかわかりにくいという大きな問題が存在します.

てんかん診療ネットワークの必要性

てんかん診療は,地域のかかりつけ医による一次診療(プライマリケア) てんかんの診断と専門治療を行う神経学専門医による二次診療,さらに外科治療が可能なてんかんセンターによる三次診療に至るモデルが提唱されており,諸外国ではこのアルゴリズムに従ったてんかん診療が実践されていますが,わが国では先述のように,地域のかかりつけ医から専門医,あるいは小児科から成人を対象としたてんかんの専門医につながる一貫したてんかん診療モデルが形成されていないのが実情です.

現在社会的問題ともなっている,高齢者てんかんの増加や運転免許と交通事故などの諸課題を解決するためにも,地域の医師とてんかん診療専門医が効果的に連携できるてんかん診療のしくみを早急に整備することが必要です. それらの問題解決の一助のために,2011年に厚労省の研究班による「全国てんかん診療ネットワーク」が立ち上げられており、地域でてんかん診療が可能な医療機関が登録され,ホームページ上で閲覧可能となっています(http://www.ecn-japan.com/). しかし現在のところ、受診・紹介の窓口は広がったものの,とくに登録医療機関間の有機的なつながりが確立されているとは言い難く,それぞれの医療機関が独自に活動をおこなっているのが現状であると考えています.

奈良てんかん診療ネットワークが担う役割

奈良県のてんかん診療レベルを上昇させ,奈良県内のてんかん患者さんすべてが,奈良県内で適切なてんかん診療を受けることができるように,以下の活動を行います.
・地域のプライマリケアを担う先生方のてんかん診療支援 :てんかん診療に関する相談の受付,適切な医療機関の紹介
・奈良県内のてんかん診療医療機関のきめ細かい診療内容の紹介
・てんかんに関する正しい知識の普及:医療従事者および市民対象の講演会の企画,本ホームページでの情報発信
・てんかんカンファレンスの開催