てんかん治療

てんかんは,なぜ治療しないといけないのでしょうか.

1.身体を守る

○てんかん発作(特に意識障害を伴う発作)による身体傷害の予防
予期せぬ突然死の予防

・てんかん患者の予期せぬ突然死(SUDEP):てんかんに罹患していること以外に死因が見いだせないもの
・てんかんがない若年成人の40倍.てんかん患者の死因の2-18%を占めます.
・発作頻度が多い,若い発症,罹病期間が長い,などが関係するといわれます.

2.社会に参加してもらう

○学業・就労・結婚などの問題を解決

・小児期発症の合併症のないてんかん患者さんの成人後,未婚3.5倍,子どもがいないのは3.0倍,失業は3.8倍と報告されています.

3.知能を守る

○成人てんかん患者で,発作が抑制されないほど,年を追うごとにIQが低下します.

・10年間でIQが90.7→83.1に下がった報告があります.
・全般強直間代発作の頻度が最も強く関係するといわれます.

とくに発達可塑性が高い小児においては,てんかん発作による悪影響がより強く,早期に発作を抑制する必要があります.

治療の方法

1.薬物治療

○てんかん発作型分類に沿った,適切な診断に基づく,適切な薬剤の選択が必要です.

○てんかんは大きく二つに分類します.ひとつは全般てんかん,もうひとつは部分てんかん(=局在関連性てんかん)です.

○全般てんかんの第1選択薬はバルプロ酸(デパケン,セレニカなど)で,部分てんかんの第1選択薬はカルバマゼピン(テグレトールなど)です.最近は,効果がこれらの第1選択薬と同等で,副作用が少ないお薬も使用可能になっています.ただし高額です(てんかんは自立支援医療の適応になり,通院費が1割に減免され,所得に応じて自己負担額の上限が決められています.市町村に申請し,自立支援医療が可能な医療機関に通院する必要があります.この自立支援医療をつかえば,医療費の問題はある程度解決できます).

○てんかんの症状は,全身けいれんだけではありません.それらの症状が全般発作なのか,部分発作なのかを的確に判断して,お薬を選択する必要があります.

・意識がなくなりその場にそぐわないおかしな行動をする発作(複雑部分発作)
・突然の恐怖感や,みぞおちから熱い感じがあがってくる感覚(自律神経発作)
・突然懐かしい光景が脳裏に浮かんだり(既視感),慣れた場所であるのに突然まったく知らないところに来たあるいは違う世界に来た新鮮な感覚(未視感)
・びくんと筋肉が一瞬収縮して,持っているものを投げ飛ばしてしまう発作(ミオクロニー発作)

などなど,数え切れないくらいの発作症状があります.
患者さん自身もそれが発作だと気がついていないこともあり,診察する医師が的確に問診する必要があります.

2.外科治療

手術のタイミングについて

○成人:世界的なコンセンサスがあります.以下の2点を満たす場合に,外科治療ができるかどうか判断します.

1.抗てんかん薬2-3剤以上で抑制できない.
2.2年に20回以上の部分発作/二次性全般化発作

○小児:発達可塑性が高い小児は,逆にてんかん発作による悪影響が生じやすく,成人のように2年間様子をみるのは長すぎます.そのため以下の2点を満たす場合に外科治療を検討します.

1.抗てんかん薬2-3剤以上で抑制できない.
2.精神運動発達の遅滞,退行が出現する.

しかし,すべての患者さんに根治手術(発作をなくす目的で行う手術)ができるわけではなく,発作の症状や持続時間を軽減し,発達の改善を期待する緩和手術を選択する場合があります.

奈良県立医科大学で最近の7年間でてんかん手術を受けた患者さんのデータを示します.上記の適応に従って,比較的若い年齢でも手術を行っています.

図1図3図2

手術の効果について

○術後1年以上経過が観察できた77人中
発作がよくなった人の割合
1.根治手術の場合:Engel ClassⅠ,Ⅱ (発作がなくなる+生活に支障がない発作がまれにある)
2.脳梁離断術の場合:転倒しなくなった
3.VNSの場合:50%以上発作が減った

根治手術 39/57 68.4%
内側側頭葉てんかん 18/20 90.0%
病変を伴う局在関連性てんかん 12/16  75.0%
病変を伴わない局在関連性てんかん 5/17  29.4%
大脳半球離断術  4/4  100.0%

緩和手術 13/20  65.0%
脳梁離断術  7/7  100.0%
VNS(迷走神経刺激術) 6/13  46.2%

手術の合併症について

手足の麻痺など,後遺症が残った人 3/94 3.19%
てんかん焦点を少しでも残すと発作が再発するために,脳の大事な部分のぎりぎりまで切除する必要がある場合,偶発的に血管や,脳組織を損傷させてしまうことがあります.

創の感染 1/151 0.66%

これらのことから,てんかん外科治療は,側頭葉てんかんなど,てんかんの種類によっては,非常によい結果が得られ,てんかん発作が脳の発達や生活の質に及ぼす悪影響を考慮すると,外科治療の価値は高いと言えます.

しかし合併症のリスクはゼロではなく,また,とくにMRIで病変がない患者さんの結果は悪いと言わざるを得ません.てんかん外科医の課題は,MRIで病変がない患者さんの治療をいかに満足できるものにするかということで,全国のてんかん外科医は日夜奮闘しています.

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作成中・・・

(文責:奈良医大 脳神経外科 田村健太郎)